オリーブのなる頃に

【自作小説】オリーブのなるころに ~第3話~

 

「北川さん、ほんとなの?」

 

北川さんが先生を殺す? できるわけない。する理由もないはず。

 

「い、いや。あ、あの、、」

 

「お前がやったんだろ! 北川! なぁ? だってお前先生に時々金借りてたろ?」

 

男子たちが次々に北川さんを責め立てる。北川さんの目はみるみる涙ぐんでしまい、顔も耳も紅潮してしまい、今にも泣きだしそうだ。でも、なぜ北川さんが先生にお金を?

 

助け舟を出すようにある女子が言った。

 

「北川さんがそんなことするわけないでしょ。なんで大事なクラスメイトのことを疑えるの?」

 

しばらくの間沈黙が続く。静まり返ったゲストルームに北川さんの今にも消えそうな声が響いた。

 

「私、違います。」

 

「え?」

 

「私、先生を殺したりなんかしてないです!そんなこと、私にできるわけないじゃないですか!」

 

ポロッ、ポロッと北川さんの目から大粒の涙があふれる。この涙を見れば誰も北川さんのことは疑えない。

 

ひとり大理石の床で泣き崩れる北川さんにそっと百乃が寄り添う。

 

「北川さん、ゆっくりでいいから話せる?これ、よかったら。ハンカチ。」

 

「宝、沢さん。す。ぐすっ。」

 

「深呼吸して。吸って。吐いて。大丈夫だよ。」

 

実は百乃は三姉弟の長女でまだ小さい弟もいるためこういう時の対応は本当に上手だった。一緒に帰っている時も迷子になっていた子供を助けたり、遊んでいてけがをした子を開放したり。泣いていたり困っている人がいるとほっておけない性格なんだと思う。

 

そんな百乃のおかげで北川さんが徐々に話し出してくれた。

 

「あの日、私は先生に相談したいことがあって話しかけました。」

 

「三時くらいに時間ありませんかって聞いたんですけど、今日は大事な約束があるから、明日にしてくれって言われて、明日相談に乗ってもらうことにしたんです。」

 

「お金を借りてたのは、定期を忘れてしまって。そのわたし、家が結構遠くて高くて、、、。」

 

「なんだよ。俺てっきりお前がやったのかと。。。金借りてたのもお前んち兄弟多いの知ってたから生活に困ってんのかと思って。疑ってゴメン。」

 

「いえ、疑わしかったのは私だから。」

 

「あの、、私、先生はその【大事な約束】の時に殺されたんだと思うんです。時間もぴったりだし。だからその人が先生を殺した犯人かもしれない、、、と思って。」

 

「北川さん。ありがとう! じゃあ、まずは、その人を見つけ出そう!」

 

犯人が分かるかもしれないと知って大喜びする百乃だが、そんなに喜んでられない。

 

「でも、どうやって?」

 

「ほかの先生にきくとか、、、?」

 

そうなのだ。その大事な約束の時に殺されたとわかったからと言ってその人を特定するのは難しい。

 

果たしてそんな大事な約束の相手を誰かに堂々と教えるのだろうか。

 

「うーん。一応聞いてみる?あんまりあてにならない気がするけど。」

 

「うーん。他にできることないかなぁ?」

 

ゲストルームに再び沈黙の間が流れる。せっかく分かった新事実なのに、これ以上どうすることもできない。

 

・・・

 

プルルルル、プルルルル~

 

突然誰かのスマホが鳴った。

 

「ん? 誰の電話だ?」と萩尾。

 

すると、新條七海がいかにも高そうな本革のバッグからジュエリー付きのスマホを取り出し、

 

「あ、じいやからですわ!」

 

「もしもし? うん、手配できた? わかりましたわ。」

 

新條さんのお嬢様度合いにはいつもくらくらする。高級外車での送迎。ゲストルームへの招待。極め付きは七海様専用執事!

生まれた時からずっと新條さんのことを見守っているらしく、私たちにもとても親切に接してくださる。

 

「皆さん! あの日の防犯カメラの映像が手に入りましたわ。」

 

「え? どういうこと?」

 

「うちの学校は廊下に防犯カメラが何台かありますでしょう? あの映像ですよっ! 教室で殺されたなら犯人が映ってるはずでしょう?」

 

そう、うちの学校には廊下に防犯カメラが設置されており、不審者の侵入防止だけでなく生徒が悪事を働かないようにという目的でつけられているのだ。

 

「ほんとだ! でも、新條さん、そんな映像どこで手に入れたの?」

 

「おじいさまがうちの学校の校長なんですの。もうすぐ爺やがパソコンを持ってきてくれますわ。」

 

「あ、忘れてた。こいつのお爺さん校長だったんだ。」

 

「さすがお嬢様。」

 

「もう、やべぇわ。」

 

お嬢様の異次元具合には同級生もさすがにこの表情だった。

 

コンコンと扉が鳴る

 

「入って!」

 

「失礼します。七海お嬢様お待たせしました。こちらが防犯カメラの映像になります。皆様でご確認ください。」

 

「じゃあ、再生しますわね。何時から何時が怪しいんですの?」

 

「北川さんの情報が加わると3時以降、百乃が見つけたのが4時だからその間の1時間をお願い。」

 

「かしこまりましたぁ!」

 

再生ボタンを押す。

ポチっ‼

 

パソコンの画面には二年二組の前の廊下が映し出される。時々通る生徒はいても二組に入っていく生徒はいない。

 

3時30分、40分、どんどん時間は過ぎていき、三田原先生以外に入っていったものはいなかった。

 

「誰も、入らなかったね、、、。」

 

「これじゃ、先生が自殺したってことを証明しちゃった?」

 

「先生は誰かに殺されたはずのに、誰にも殺せない。。。」

 

第4話へ続く。。。

 

************

【次回予告】

北川さんの疑いも晴れ、犯人は先生と大事な約束をした人物?しかし、防犯カメラには誰も映っておらず、先生の自殺を逆に、証明してしまうことに!

次回、佳音の不思議なパワーと先生殺しの真犯人に迫る!

次回更新日は1/24(日)‼

 

オリなるは毎週日曜日午前10時更新です!

次回もまた、お楽しみに~!

 

<<登場人物紹介>>

東堂佳音(とうどう かのん)・・・この物語の主人公。四年前に兄を無くし、その時から不思議な能力を手に入れた。真面目で成績優秀。みんなからも良く頼られているが少しクールで不思議チャンなところがある。

宝沢百乃(たからざわ ももの)・・・天然でおっちょこちょいだが友達思いでやさしい子。佳音の1番の親友。佳音とは中学の頃から一緒だとか。兄の死で落ち込んでいた佳音をここまで明るくしてくれた立役者。

新條七海(しんじょうななみ)・・・祖父が校長、父が大手不動産会社社長。超がつくほどのお嬢様。喋り方が独特で教室に入ってくる際も『ごきげんよう~』と言う。

萩尾蒼良(はぎおそら)・・・生意気だが何かと佳音や百乃の事を助けてくれる。身長についていじるとすごく怒る(ちびだから。)最近は同級生の男子に髪型がパッツン前髪なことで可愛いといじられている。

三田原侑祐(さんだはら ゆうすけ)・・・佳音と百乃もいる2年2組も担任。学年人気ナンバー1。教室で首を吊って亡くなっていたが佳音曰く自殺ではないらしい。(不思議なちから?)いつもみんなに明るく先生間でも評判が良かった。

 

第4話はコチラ↓

【自作小説】 オリーブのなるころに ~第4話~ 「あら、映像に何の意味もありませんでしたね...。」 誰も映ってない? 何で? 「ありがとう。でも、犯人が写ってないって...

 

第1話から読みたい方は↓

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