「あら、映像に何の意味もありませんでしたね…。」
誰も映ってない? 何で?
「ありがとう。でも、犯人が写ってないってことは先生は自殺ってことだよね?」
「あのさぁ、ずっと気になってたんだけどさなんで東堂はそんなに先生が自殺じゃないって言いきれるわけ?」
萩尾が一気に核心を突いてきた。
今までグダグダと話してこなかった、いや話せなかった『先生が自殺じゃない理由』
「あ、いや。あの。」
「あ、別に話しにくいこととかだったらいいんだけど。ずっとそこがなんかちょっと突っかかるっていうか。。。腑に落ちなくて。」
「そういえばそうでしたわね。佳音さんはなぜ自殺ではないと知っておられるんですか?」
百乃が口を開いた
「佳音、そろそろ話しても、いいんじゃない?」
「じゃあ、長くなるけど…。」
「知ってる人もいるかもしれないけど、わたし兄を6年生の時に亡くしてて。その兄が自殺で、首を吊ってる現場を見てしまって。。。』
『それから動物の死体や人の遺体を見ると、その動物や人の【生きたい】っていう気持ちが顔の周りにリングとして現れるようになったの』
『初めてそれに気付いたのは、ひいおばあちゃんのお葬式に行った時。棺を開けて最期の顔を見たら、顔の周りに3つリングがあった。』
『中学校の授業で、カエルの解剖をした時も、リングが見えた』
『それで、百乃を探しに行って首を吊っている先生を見た時、リングが5つもあったの。今までに見たことがないくらい、くっきり濃くてものすごく生きたがってたんだと思う。』
***
私は初めてこんな大勢の人に自分の過去のことを話した。
兄が死んでからは両親にも、小学校の親友にも、言えなかった。
唯一言えたのは百乃だけ。百乃はこんな暗い私の話を聞いてもさらっと流してくれて、かわいそうとか大変とか変に同情しないところが私の心を少し楽にしてくれた。
「そんなことが…。」
みんな、引いてる。
やっぱりこんな変なこと急に言われても理解できないし信じられないか。私だって自分の力を信じられなかった。
「その力信じていいんだよな?」
萩尾が言った。
「うん。確認は出来ない、だけど合ってると思う。」
「じゃあ俺たちは全力で犯人を探すまでだ!」
『おー!』
クラスが一気にまとまった気がした。もっと早く話しておけばよかった。
みんな何とも言わず受け止めてくれて、ずっとずっと心にのしかかっていた黒く重いおもしがすっと消えたような気がした。
「とは言っても…。 廊下通らないでどうやって入るんだ? ずっと教室にいたとか?」
「いえ、私が帰った時は教室には誰もいなかったのでその可能性はないと思います。」
「そうか。なら…。」
ゲストルームを見回していた百乃がはっとして言った。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながらゲストルームをぐるっと一周する百乃。
「窓じゃない?! 窓なら入れるはずだよ! うちの校舎は壁に段差が多いし、登ろうと思えば登れるんじゃないかな? 前に隣のクラスの問題児の、あ~誰だっけ?」
「高松‼」
「そう高松!高松君が壁に登って怒られてたじゃん。落ちたら大けがするところだったんだぞー。って!」
教室がざわつく。その手があったか! 高松は結構ひょろっとしてるし鉄道部でしっかり文化部。そんな高松でも登れたなら男子ならもちろん運動部の女子も登れるんじゃないだろうか。
「あ、でもあいつクライミングの大会かなんかで準優勝してるらしいぜ。」
それなら、ガタイの良い男性しか登れない。とすると、、、。
「でもさ、仮に窓の鍵が閉まってたら入れないよな? 犯人は窓の鍵が空いてることを分かってたはずじゃねぇのか? せっかく登ったのに鍵が開いてなかったらただ目立つだけだし、リスクが高すぎるだろ。」
「じゃあ、もっと前に鍵を開けに来たとか?」
「犯人が教室に、侵入したのが三時前で最後に帰ったのが二時半。三十分の間には誰も映っていなかったし、」
「西山さん、帰るときに鍵が閉まってたか確認した?」
「いいえ。カーテンを閉めていたので気づきませんでした。」
カーテン! そういえばあの時も。
「うちのクラスの誰かに鍵を開けておいた共犯者がいるってこと?」
「とうとうほんとにクラスメイトを疑わないといけなくなっちゃったね。」
この状況で、もしカギを開けた人がいてもこの空気じゃ言い出せない。
一体、誰が、鍵を?
「では、皆さん目を瞑ってください。私しか見ません、わかっても誰にも言いません。だから、正直にあの日誰かに頼まれて鍵を開けておいた人、挙手してください。」
シーン
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・
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スッと華奢な手が、小刻みに、震え、ながら。。。
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【次回予告】
三田原先生殺しに共犯者現る?!果たして手を挙げた犯人は誰なのか。なぜ先生を殺すことに協力してしまったのか。次回、いよいよ共犯者が真犯人について語る!
次回更新は1/31です!
第5話もお楽しみに!
<<登場人物紹介>>
●東堂佳音(とうどう かのん)・・・この物語の主人公。四年前に兄を無くし、その時から不思議な能力を手に入れた。真面目で成績優秀。みんなからも良く頼られているが少しクールで不思議チャンなところがある。
●宝沢百乃(たからざわ ももの)・・・天然でおっちょこちょいだが友達思いでやさしい子。佳音の1番の親友。佳音とは中学の頃から一緒だとか。兄の死で落ち込んでいた佳音をここまで明るくしてくれた立役者。
●新條七海(しんじょうななみ)・・・祖父が校長、父が大手不動産会社社長。超がつくほどのお嬢様。喋り方が独特で教室に入ってくる際も『ごきげんよう~』と言う。
●萩尾蒼良(はぎおそら)・・・生意気だが何かと佳音や百乃の事を助けてくれる。身長についていじるとすごく怒る(ちびだから。)最近は同級生の男子に髪型がパッツン前髪なことでアヒルみたいで可愛いといじられている。
●三田原侑祐(さんだはら ゆうすけ)・・・佳音と百乃もいる2年2組も担任。学年人気ナンバー1。教室で首を吊って亡くなっていたが佳音曰く自殺ではないらしい。(不思議なちから?)いつもみんなに明るく先生間でも評判が良かった。
第5話はコチラ↓
https://shio-dorama.com/olive05/
前回までの話はこちらから。
https://shio-dorama.com/olive01/
https://shio-dorama.com/olive02/
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