オリーブのなる頃に

【自作小説】オリーブのなるころに ~第5話~

 

『ありがとうございます。これで私は犯人がわかりました。』

『クラスメイトの共犯者さんが誰かは明かしません。だけどみんな1対1で私と話してもらえませんか? 共犯者のカモフラージュとしてですが。』

それから私は、ひとり5分ずつ話を聞いた。そしていよいよ共犯者さんの番が来た。

『共犯者さん、あなたは先生の指示で鍵を開けたんですよね。あなたの大好きな先生の。』

 

『はい… 私先生のことがだいっ好きで、、。だから、先生から頼み事をされるなんて、ほんっとに光栄な事で、うれしくて、舞い上がってしまって、それでわけも知らずに。人殺しのためだなんて、もちろん聞いてなくて…。』

『それで、今は、凄く、後悔してます。 私が鍵を開けなければ、さんちゃんは死ななかったのに…。』

 

共犯者さん、いや、、、

咲本綾音さんの目からは、大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちていた。

 

「話してくれてありがとう。辛いよね。 一旦落ち着いてからみんなの所に戻ろう。』

『大丈夫、あなたは悪くない。 もちろん起こったことはもう変えられないけど、咲本さんだって先生に騙された被害者だから。そんなに自分を責めないで。』

結局咲本さんはいったん泣き止み、その場を後にした。 しかし、みんなの所に戻る頃にはまた思い出してしまったのか、みんなにどう言われるのか怖くなったのか、どんどん涙目になっていき、赤くはれた目でみんなの元に戻った。

「え、綾音ちゃん!どうしたの? 大丈夫? 目めっちゃ腫れてるよ!!」

「ごめん。ほんとに、私のせいで、、、。」

咲本さんが絞り出したような声で言った。

 

「えっと、見てもらったらわかるように鍵を開けたのは咲本さんでした。」

「ごめんなさい。私のせいで、私のせいで先生が…。うわぁぁん。」

再び泣き崩れる咲本さん。

「でも、先生を殺すためだとは聞いてなかったんだよね?」

「うん。先生からは、風を通すために開けといて、と言われてやりました。でも、それでも私のせいで。先生が。ほんとに、ごめんなさい。私すっごく後悔してて。でも、もうこの事実は変わらないから、、」

「綾音ちゃん。つらいよね。」

泣き崩れる咲本さんのもとに友達が集まってきた。うちのクラスは、やっぱり優しい。

「咲本も辛いよな、そんなときに悪いんだが、その先生って誰なんだ?」

クラスの中でもわかっている人は数人いたが、その先生についてはきちんと話していなかったこともあり、知らない人の方が多かった。

 

そして、部屋の空気が一気にぴんと張り詰める。

 

咲本さんが覚悟を決めたように一息ついてから言った。

 

「神原先生です。」

 

「え?」

一瞬時が止まったように静かになる。みんな目が点になっている。

神原先生は体育の先生で筋肉オタク。軽々と壁も登ってしまうだろう。それに私には神原先生が三田原先生を殺す理由に心当たりがあった。

「私も今回、三田原先生の事を殺したのは神原先生だと思います。証拠もまだないし、本人に聞いてみないと分からないけど…。」

「では、学校に行きませんか? この時間ならもう授業も終わっているはずですし(^^)」

新條さんが、いつもの笑顔で言った。

 

もうすでに時計の針は8時を指していた。

学校で説明を受けてからもう10時間以上。張り詰めた空気の中で考えっぱなしだった生徒達はみんな疲れ果てていた。新條さんのタワーマンションを出て再び学校にみんなで戻ってきた。

 

向かうは職員室。

目的は1つ!

 

コンコン

「失礼します。」

「先生方、二年二組の教室に集まっていただけませんか? 少し、聞いていただきたいことがあります!」

先生たち、校長先生に集まってもらい、ことの経緯をすべて話した。先生は自殺ではないこと。 犯人はこの中にいること。犯人は窓から侵入していたこと。

みなさん、一度は驚いていたが、すんなりと事態を受け入れてくれた。

 

「みんなでそこまで調べたのかい? 三田原先生も愛されていたんだね。」

「校長先生! そんなことを言ってる場合じゃないですよ! 学校内で先生が先生を殺すなんて絶対あっちゃいけないことです!」

先生たちは学校のイメージがどうだとか、警察沙汰になるのかとか、そんなことばかり話していた。三田原先生が殺されて苦しかったり悲しかったりする事には全く触れずに。。

大人は怖い、きっぱり割り切ってしまえる。経験からの強さなのかもしれないけど、私はそんな強くなってしまった大人にはなりたくない。

「それで、犯人が、わかりました。」

「誰だい?」

 

「神原先生です。」

先生達の視線が一気に神原先生に集まる。いつもはいろいろと面倒なことも引き受けてくれたり優しい先生、だからこそ誰も予想しなかった。

「ですよね? 神原先生。」

「はい。そうです。」

「二年二組の皆さん、良くここまでたどり着きましたね。私が三田原殺しの犯人です。間違いありません。」

そう証言する神原先生は少し寂しそうで、でも、確かに強い芯があった。三田原先生はそんなに殺したいほどの人だったのだろうか。。。。。

 

最終話に続く➡

 

【次回予告】

次回最終回!

神原先生が三田原先生を殺した理由が明らかに!そして、三田原先生亡きあと、試される2年2組の絆。(スピンオフとアフターストーリーもあるよ!)

2/7公開です!

最終話もお楽しみに~!

 

<<登場人物紹介>>

東堂佳音(とうどう かのん)・・・この物語の主人公。四年前に兄を無くし、その時から不思議な能力を手に入れた。真面目で成績優秀。みんなからも良く頼られているが少しクールで不思議チャンなところがある。

宝沢百乃(たからざわ ももの)・・・天然でおっちょこちょいだが友達思いでやさしい子。佳音の1番の親友。佳音とは中学の頃から一緒だとか。兄の死で落ち込んでいた佳音をここまで明るくしてくれた立役者。

●咲本綾音(さきもと あやね)・・・神原先生の大ファンで典型的な乙女体質。前髪がいつも完璧で行動があざとく、守りたくなってしまう。大学生のお兄ちゃんがいてすごくイケメンらしい。

萩尾蒼良(はぎおそら)・・・生意気だが何かと佳音や百乃の事を助けてくれる。身長についていじるとすごく怒る(ちびだから。)最近は同級生の男子に髪型がパッツン前髪なことでアヒルみたいで可愛いといじられている。

三田原侑祐(さんだはら ゆうすけ)・・・佳音と百乃もいる2年2組も担任。学年人気ナンバー1。教室で首を吊って亡くなっていたが佳音曰く自殺ではないらしい。(不思議なちから?)いつもみんなに明るく先生間でも評判が良かった。

 

最終話はコチラ↓

【自作小説】オリーブのなるころに ~最終話~ 「嘘ですよね? 神原先生! あなたがそんなことをするなんて、」 「本当です。僕が殺しました。」 教室...

 

前回までの話はこちらから。

【自作小説】オリーブのなるころに 〜第1話〜 「お、にい、ちゃん。。。」 六年前の今日、最愛の兄が自殺した。 私はまだ12歳で、兄に晩御飯ができたと伝えに行った時...
【自作小説】オリーブのなるころに 〜第2話〜 「佳音、、、。これ、、夢だよね? すっごく悪い悪夢だよね?」 「百乃、、これは悪夢なんかじゃない。とても悪い現実なんだよ。...
【自作小説】オリーブのなるころに ~第3話~ 「北川さん、ほんとなの?」 北川さんが先生を殺す? できるわけない。する理由もないはず。 「い、いや...
【自作小説】 オリーブのなるころに ~第4話~ 「あら、映像に何の意味もありませんでしたね...。」 誰も映ってない? 何で? 「ありがとう。でも、犯人が写ってないって...

 

しおについて🧂

👇登録すると、更新のお知らせが届きますよ!ぜひ登録してください!

ドラマに恋した中学生【しお】 読者登録フォーム

●LINEで更新のお知らせを受け取りたい方は↓

友だち追加