オリーブのなる頃に

【自作小説】オリーブのなるころに ~最終話~

 

「嘘ですよね? 神原先生! あなたがそんなことをするなんて、」

 

「本当です。僕が殺しました。」

 

教室中が凍りついた。誰も神原先生が人殺しを犯すなんて考えてもいなかった。しかしこんな時でも冷静に校長先生が口を開く。

「神原先生、詳しくお話聞かせて貰えませんか?」

「はい。分かりました。」

バラバラに座っていた先生方が教卓前に集まり、神原先生が教壇に立つような形になった。

「僕は、三田原先生を殺しました。昨日の三時半頃です。」

立ち居振る舞いは堂々としているけど声が僅かに震えている。まるで何かに怯えているかのように恐る恐る神原先生は事件当日のことを話し出した。

 

「あの日、朝の職員朝礼の後に、今日の三時に相談したいことがあると言っておきました。三田原先生とは仲が良くていつも生徒の成績のことやプライベートのことなど、相談に乗ってもらっていました。そして相談はいつも教室でしていて、だからその日も二年二組の教室でと約束しました。」

「そして、僕は監視カメラに写らないように、三田原先生が来る前に校舎の壁を登り、窓から教室に入って待っていました。窓はある子に頼んであけておいてもらいました。そして相談が終わって、お礼に肩もみをすることになって先生の背後に回り、ジャージのポケットに隠しておいたロープで首を締めました。」

「ロープは体育倉庫にあったものを使いました。」

 

やはり先生を殺したのは神原先生だった。記憶の鮮明さからも誰かを庇っているとも考えにくい。

「神原先生、なんでそんなことを?」

校長先生が諭すような口調で神原先生に聞いた。神原先生の表情が曇り、消え入りそうな声で吐き出すように言った。

 

「あいつは何でも持ってたから。」

 

その一言を皮切りに神原先生は爆発した。今まで溜め込んでいたものを全て吐き出すかのように殺した理由を話し出した。

 

「だってあいつのクラスはいつも平均点一位で、俺のとこはずっと二位ですよ!? 職員室でも毎回褒められるのは三田原で、二組で。 うちのクラスの子はみんなもうやる気を無くしてました。『どうせ頑張っても二組には勝てないんだから』って!」

「俺はそれを励ますことしか出来ない! アドバイスしてみんないい子でそれを熱心に聞いてくれるのに。なんであいつばっかり、いつも、ずっと、俺は一番にはなれない。三田原の次だった!」

神原先生はいつもの温厚な姿からは想像できないような声で叫んだ。

 

「それで三田原先生がいなくなれば自分が一番になれると思って殺したんですか?」

他の先生は暴れている神原先生を憐れむような眼で見ていた。

「ああ、そうだ。俺は一番になりたかった! 一番になれたはずだった。あいつがいなければ、だけど、なのに、、、」

「殺さなければよかったぁ‼」

神原先生の泣きわめく声がもう誰も生徒のいない校舎中にこだましていた。神原先生は三田原先生を殺したことをすごく後悔していた。三田原先生は神原先生にとってただの敵ではなく高めあっていける仲間だったのだと気づいたのだろう。普段から三田原先生と神原先生は仲が良いと評判だった。

「あいつは、何でもできていろんな人から信頼されて、いつもむかついたけど、だけど、あいつは、それだけの努力をしてたんだ。寝る間も惜しんでずっと真正面から向き合ってきてたんだ。それでいて俺の相談にも乗ってくれたり、いつも助けてくれたりして。でも、俺は、逃げた。俺は自分からも、あいつからも、大事な生徒からも逃げたんだ!」

「俺は最低な教師だ!もう生きてる意味なんかない。ここで死んでやる。」

神原先生はナイフを自分の首にあてながらひたすら泣きじゃくった。みんな硬直し、どうにもできなかった中、校長先生が話し出した。

 

「実はね、昔もこんなことがあったんですよ。仲のいい二人の先生がいてでも、いつも一番と二番で、二番の先生が私に相談してきたんです。どうしたら一番になれるのか、ってね。僕はまだ校長職についてなくてどうすることもできなかったんですがその後、激しいケンカになってしまって。どちらの先生もこの学校をおやめになりました。私はみんな一番だと思いますよ。成績だけが大事なんじゃない。行事ごとでの団結力は二位の先生のクラスが圧倒的でしたからね。もちろん結果も大事ですけど、そこに至るまでの過程はもっと大切なんじゃないですか?」

この校長先生の言葉を聞き神原先生は余計に号泣していた。

いつまでもいつまでも教室に神原先生の泣き声が響いていた。しばらくして誰が通報していたのか警察が到着し、神原先生はパトカーで警察に連行されていった。そのあと、先生方は緊急会議をするため会議室に行ってしまい、私たちは教室に残された。

 

***

 

「ここで殺されたんだよな。さんちゃん。」

 

静まり返る教室で百乃が口を開いた。

「そう思うとなんか、悔しいね。」

犯人も見つかって、落ち着いたからか三田原先生がもうこの世にはいないということに現実味がわき、私たちは再び悲しい空気になってしまった。

「あんなにいい先生だったのにね。ずっとみんなのために頑張ってくれて。」

しんみりした空気の中、誰も泣くことなく三田原先生の思い出を話した。

 

「あの時、のさんちゃん超ダサくてさ~!」

夜の教室にみんなの笑い声がこだまする。今まで悲しみと後悔であふれていた教室は三田原先生への感謝と未来への希望であふれていた。

 

「でも、東堂が話してくれなかったら俺らは何も気づけてなかった。ただの事故として何も疑わずに神原先生も学校で働いてたかもしれない。本当にありがとな。東堂。」

萩尾が言った。そしてクラスのみんなから佳音への感謝の言葉が飛び交った。

「いや、私は何も。ただ、知ってしまったことを伝えるのは【視える者の使命】だと思うから。。。」

 

私は【視えて】しまう、視たくなくても視てしまうのなら『できることをする』しかないんだと思う。

 

「そろそろ帰ろっか。 もう遅いしね! 明日からまた、ふつうに学校なんだよね~。担任が亡くなったっていうのに、それでも世界はいつも通り進んでく。」

百乃が暗闇の中に浮かぶ満月を眺めながら言った。

「私たちはさ、これからもっと頑張っていかないといけないよね。さんちゃんが教えてくれたことを実践して、今度はわたしたちだけで一位を取り続けなきゃ! さんちゃんのためにも。」

あんなに泣いていた百乃も今ではすっかり元気になって、この調子だ。

「そうだね。 頑張ろう。 先生のおかげでみんなはもう大丈夫だよってこと証明しよう、見せよう天国の先生に。」

「そうだね。いつまでも見守り続けてくれるよ。きっと。」

「うん。」

 

みんなで見上げた夜空に一筋の流星が流れた。

 

 

 

~ エピローグ ~

その後、二組には新しい担任の先生が来た。その先生も、三田原先生のことを知っていて私たちのことをサポートしてくれた。神原先生が逮捕された翌日、神原先生のクラスだった一組の生徒がみんなで謝りに来た。

「うちの神原先生が本当にごめんなさい。わたしたちもすごショックだったけど、二組の方たちはもっとつらいですよね。本当にごめんなさい。」

今までひたすら【敵】でしかなかった一組が【ライバル】になった瞬間だった。そして一組の子たちはみんな神原先生が大好きだったと言っていた。

「私たちはみんな神原先生のことが大好きでした。いつも2位の私たちを励ましてくれて、もっと賢くなれるようにいろいろ頑張ってくれて。 でも、私たちがバカだからいつも2位で、正直悔しかったです。 先生はあんなに頑張ってくれてたのに。だから、先生のために絶対二組に勝ちますから! 私たちにとっては神原先生も立派な先生ですから!」

そうして一組と二組のテストの平均点争いは激化し、いつもは二組が圧倒的だったのに、一組と二組が接戦で首位争いをするようになった。そのふたクラスだけレベルが高く、他クラスを寄せ付けないほどの圧倒的差だった。

 

これからも私たちは進んでいく

あんなにへこんでいた百乃も、先生を殺す手伝いをしてしまって自分を責めていた咲本さんも、みんなもう立ち上がって前を向いている。

わたしたちには心強い味方がいつでもそばにいてくれるから。何処までだって進んでいける。

「佳音!ボーっとしてるけどどうしたの?」

「ううん、何でもない。帰ろっか。」

「うん!

先生、私たちはもう大丈夫。

これから先どんなにつらいことがあっても立ち向かえるよ。

 

****

 

なんと次週は、スピンオフ公開です!

2/14更新です!生前の三田原先生についてや知られざる裏設定なども公開します!

ぜひ来週も楽しみにしていてください!

 

<<登場人物紹介>>

東堂佳音(とうどう かのん)・・・この物語の主人公。四年前に兄を無くし、その時から不思議な能力を手に入れた。真面目で成績優秀。みんなからも良く頼られているが少しクールで不思議チャンなところがある。

宝沢百乃(たからざわ ももの)・・・天然でおっちょこちょいだが友達思いでやさしい子。佳音の1番の親友。佳音とは中学の頃から一緒だとか。兄の死で落ち込んでいた佳音をここまで明るくしてくれた立役者。

●咲本綾音(さきもと あやね)・・・神原先生の大ファンで典型的な乙女体質。前髪がいつも完璧で行動があざとく、守りたくなってしまう。大学生のお兄ちゃんがいてすごくイケメンらしい。

萩尾蒼良(はぎおそら)・・・生意気だが何かと佳音や百乃の事を助けてくれる。身長についていじるとすごく怒る(ちびだから。)最近は同級生の男子に髪型がパッツン前髪なことでアヒルみたいで可愛いといじられている。

三田原侑祐(さんだはら ゆうすけ)・・・佳音と百乃もいる2年2組も担任。学年人気ナンバー1。教室で首を吊って亡くなっていたが佳音曰く自殺ではないらしい。(不思議なちから?)いつもみんなに明るく先生間でも評判が良かった。

 

前回までの話はこちらから。

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